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私は思はず膝を叩いた。短慮一徹の武村兵曹は腕を鳴して、漫々たる海洋を睨み廻しつゝ 『此處は所も印度洋、其不屆な小忰めは何處に居る。』と艦上の速射砲に眼を注いで 『今は無上に愉快な時だぞ、今一層の望みには、新に鑄へた此速射砲で、彼奴等惡つくき海賊共を鏖殺にして呉れんに。』 『ヒヤ/\、壯快! 壯快!。』と轟大尉は掌を鳴した。艦長松島海軍大佐、濱島武文、其他同席の二三士官等は、凛々たる面に微笑を浮べて、互に顏を見合す時、軍艦「日の出」の右舷左舷には、潮の花は玉と亂れて、艦の速力は飛ぶが樣であつた。 それより、私と武村兵曹とは、艦中の一同から筆にも言にも盡されぬ優待を受けて、印度洋の波濤を蹴つて、コロンボの港へと進んで行く。日うらゝかに、風清き甲板で、大佐や、濱島や、春枝夫人や、轟大尉や、其他乘組の士官水兵等を相手に、私の小説にも似たる經歴談は、印度洋の波のごとく連綿として盡くる時もなかつた。ずつと以前に溯つて、弦月丸の沈沒當時の實况。小端艇で漂流中のさま/″\の辛苦。驟雨の事。沙魚釣りの奇談。腐つた魚肉に日出雄少年が鼻を摘んだ話。それから朝日島に漂着して、椰子の果實の美味かつた事。猛狒の襲撃一件。櫻木海軍大佐との奇遇。鐵の響と屏風岩の奇異。カンボジア ビザ The Ru shearing the leek committing a rain