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 Tと別れてからちやうど五月ぐらゐ経つ。亡くなつたのが三月二十四日、けふは八月十日である。生きてゐた三月から今日までつづいてまだ彼は私のすぐ近辺にゐるのだつた。しかしその彼が何を言ひたくて来てくれたのだらう? 今日は私が一人であたりが静かになつてゐるせゐでもあるが、いま、この国に、私たちの身に一大変化が来るのだらうか? それとも軽井沢に大きな危険が来るから私に逃げろとでも言ひに来たのかしら? 私はいろいろくり返して考へて見たけれど、何よりもまづ不断の彼の勤めがへりの無事な姿が目に浮いて、それに微笑をふくんだ愉しさうな調子が思ひ出された。あぶない時の知らせではない。それなら、何の知らせ?  考へぬいて私は階段を下り、いつも主人が宵のうち坐つてゐる茶の間に行つた。「あのね、Fさん、いまTが私のところに来ましたよ。何か言ひかけたんですけど、私が何か言つた拍子にふいと消えてしまつたんです。何かの知らせに来たと思ふんですが、何でせう?」宿の主人も眼を大きくして「Tさんが!……それは何か急な御用ですね。何か変事があるのでせうか? それとも、東京のお宅の事でせうか?」彼もTがまぼろしに来たことを疑はなかつた。しかし二人でどんなに考へても何の知らせに来たのかわからないから、明日まで待つてみようといふことになつた。准看護師求人サイト 准看護師の給与と転職のしやすさ - 看護師の転職