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「けったいな言い方やねんなあ。嫌いやのん、それとも好きやの。どっちやの」  好きでもないのに好いてると思われるのは癪で、豹一は返答に困った。しかし、嫌いだというのは打ち壊しだ。そう思ったので、 「『好き』や」  好きという字にカッコをつけた気持で答えた。それで、紀代子ははじめて豹一を好きになる気持を自分に許した。  一週間経ったある日、八十二歳の高齢で死んだという讃岐国某尼寺の尼僧のミイラが千日前楽天地の地下室で見世物に出されているのを、豹一は見に行った。女性の特徴たる乳房その他の痕跡歴然たり、教育の参考資料だという口上に惹きつけられ、歪んだ顔で見た。ひそかに抱いていた性的なものへの嫌悪に逆に作用された捨鉢な好奇心からだった。自虐めいたいやな気持で楽天地から出てきたとたん、思いがけなくぱったり紀代子に出くわしてしまった。変な好奇心からミイラなどを見てきたのを見抜かれたとみるみる赧くなった。近眼の紀代子は豹一らしい姿に気づくと、確めようとして眉の附根を引き寄せて、眼を細めていた。そんな表情がいっそう豹一の心を刺した。胃腸の悪い紀代子はかねがね下唇をなめる癖があり、この時もおや花火をあげてると思ってなめていた。いきなり、豹一は逃げだした。風俗アルバイトリンク 泣く子と地頭には勝てぬ