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 青年の声は、だん/\低くなつて来た。が、その声に含まれてゐる熱情は、だん/\高くなつて行くらしかつた。しんみりとした調子の中に、人の心に触れる力が籠つてゐた。自分の名が、青年の口に上る度に、美奈子は胸をとゞろかせながら、息を潜めて聞いてゐた。  母が何とも答へないので、青年は又言葉を続けた。 「返事を待て、返事を待つて呉れと、仰しやる。が、その返事がいゝ返事に定まつてゐれば、五年七年でも待ちます。が、もし五年も七年も待つて、その返事が悪い返事だつたら、一体何うなるのです。僕は青春の感情を、貴女に散々弄ばれて、揚句の端に、突き離されることになるのぢやありませんか。貴女は、僕を何ちらとも付かない迷ひの裡に、釣つて置いて、何時までも何時まで、僕の感情を弄ばうとするのではありませんか。僕は、貴女のなさることから考へると、さう思ふより外はないのです。」 「まさか、妾そんな悪人ではないわ。貴君のお心は、十分お受けしてゐるのよ。でも、結婚となると妾考へるわ。一度あゝ云ふ恐ろしい結婚をしてゐるのでせう。妾結婚となると、何か恐ろしい淵の前にでも立つてゐるやうで、足が竦んでしまふのです。無論、美奈子が結婚してしまへば、妾の責任は無くなつてしまふのよ。結婚しようと思へば、出来ないことはないわ。が、その時になつて、本当に結婚したいと思ふか、したくないか、今の妾には分らないのよ。」 定期保険安い