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 そして、やっと見つかって、いそいそと会釈したのだが、陽子が京吉と話をしているので、椅子を立つまでは、もう一本葉巻を吸わなくてはなるまい――という彼らしいエティケットで諦めた。  しかし、京吉にはそんなエティケットの持ち合わせは、耳かきですくう程もなかった。 「ねえ。泊めてくれよ」 「…………」 「今夜……。いけない……?」 「呆れたッ!」  と、言葉だけでなく、本当に陽子は呆れて、 「――どうしてあんたを泊めなくっちゃならないの……?」 「だって、土曜の晩という奴は、たいていの女は差し障りがあるんだよ。ママみたいに……。茉莉と陽子ぐらいだよ。土曜でも清潔なのは……」 「だって、あんた茉莉に借り切られてるんでしょう」 「だから、茉莉に万一のことがあった時の話さ。死んじゃったりしたら、おれ今夜泊る所が……。おれ、茉莉が死んじゃうような気が……」 「する……? あんたもそんな気がするの……?」  陽子は急に心配になって来て、 「――あ、そうだ。こんな話してないで、あんた事務所へ行って来てよ。お医者が来てるかどうか。ハバハバ行って見て来てよ」  そして、ホールを出て行った京吉の後姿を見送って振り向くと、眼の前に春隆が立っていた。

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