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 やがて鶴雄は急に歩度をゆるめて標札を見上げながら歩いた。 「なんだ、下鴨に下宿してるのじゃなかったのか」  と、宮子はふとがっかりした。  しかし、宮子はすっかりは失望しなかった。鶴雄がどこか訪ねる家を探しているらしいのは、もっけの倖いだと、宮子は思った。  宮子はいきなり寄って行って、 「どこのお家を、探してらっしゃるの」  と声を掛けた。 「はあ」  と、鶴雄は帽子をとって、 「――小郷さんというお宅なんですが……」 「小郷……?」 「ええ」 「じゃ、あなたは小郷という人をこれから訪ねて行くの……?」  宮子は思わずキンキンと弾んだ声になった。 「そうです」 「小郷はあたしの家よ。そこ曲ったところ。うふふ……。いやでも御一緒ってわけね。うふふ……」  宮子は意味ありげな笑いを、蓮ッ葉に笑いながら、鶴雄を誘って曲り角を折れて行った。  やがて、大きな門構えの家の前まで来ると、 「ここよ。さア、どうぞ」  宮子はくぐり戸をあけて、先にはいったが、鶴雄はふと突っ立って、 「小郷虎吉」  という標札をじっと挑み掛るように見上げていた。 「何をぼんやりなすってるの。どうぞ」  宮子はじれったそうに言った。 鹿沼 歯医者 Блог пользователя eteni ≫ скачать на Безпалева.ру