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「そうじゃないか熊城君、有名なランジイ(仏蘭西(フランス)の暗号解読家)の言葉に、秘密記法の最終は同字整理にあり――というのがあるからね。そこで、その同字整理を紋章のない石に試みて、sとs、reとle、stとstを除いてみた。すると、それが Cone(松毬)という一字に、変ってしまったのだよ。ところが、その松毬というのが、寝台の天蓋にある頂飾にあって、それがまた、薄気味悪い道化師なんだがね」とそれから帷幕の中に入って、蒲団の上に、卓子や椅子を一つ一つ積み重ねていった。そうして、最後に立箪笥が載せられたとき、検事と熊城はハッとして息を嚥んだ。と云うのは、松毬の形をしたその頂飾が口を開いて、そこからサラサラと、白い粉末が溢れ出たからであった。すると、法水の舌が、黒死館の過去を暗澹とさせたところの、三つの変死事件に触れていった。 「これが、暗黒の神秘――黒死館の悪霊さ。それを修辞学的に云えば、さしずめ中世異端の弄技物とでも云うところだろうがね。しかし、その装置の内容たるや、過去の三変死事件が、それぞれ同衾中に起ったのを考えれば判るだろう。つまり、二人以上の重量が法度で、それが加わると、松毬の頂飾が開いて、この粉末が溢れ出すのだよ。それも、以前マリア・アンナ朝時代では、媚薬などを入れたものだが、この寝台では桃花木の貞操帯になっているのだ。と云うのは、この粉末が確かストラモニヒナス(註)――ほとんど稀集に等しい植物毒だろうと思うからだよ。それが鼻粘膜に触れると、狂暴な幻覚を起すのだから、最初明治二十九年に伝次郎事件、それから三十五年に筆子事件――と二つの他殺事件を起して、ついに最後の算哲を、人形を抱いたあの日に斃してしまったのだ。つまり、このディグスビイの呪詛と云うのは、『死の舞踏』に記されている、奢那教徒は地獄の底に横たわらん――の本体なんだよ」 准看護師求人サイト ナース/看護師・准看護師の求人 募集 転職 就職 求職はジェイ・ナース ...